今回の選挙の結果は、英国における製品規制、法令遵守、訴訟に対するアプローチに顕著な変化をもたらす可能性が高く、ひいては英国市場で製品やサービスを提供する企業にも変化をもたらすことを意味する。
英国の選挙: 英国市場で活動する製品を提供する企業(プロダクトカンパニー)に起こりうる影響。
主なハイライトであると考えるものは以下の通りである。
- 人工知能(AI): 労働党が勝利した場合、プロダクトカンパニーは、特に最も強力なAIモデルに関して、AIを規制する成文法の成立を期待できる。また、新しいレギュラトリー・イノベーション・オフィスの導入も期待できる(詳細は以下を参照)。一方、保守党が政権の座に留まる場合、英国では、AI規制に対する現在のまま、状況に応じたアプローチによる軽い規制で、包括的なAI法は制定はされない可能性が高い。
- オンラインの安全性: 保守党は、昨年制定されたオンライン安全法(OSA)を導入し、オンラインサービス提供事業者に新しい規制体制を導入した。保守党は、年齢確認やペアレンタルコントロールに関連するものを含め、オンラインでの子供の安全を保護するためのさらなる措置について協議することにより、OSAに基づき制度を構築していくことを引き続き表明している。例えば、学校での携帯電話の使用を禁止する法律(現行のガイダンスからの格上げ)も、この取り組みの一環として期待できる。しかし、労働党はさらに踏み込んで、労働党が政権を握った場合、「OSAに基づき、可能な限り迅速に規定を前倒しする」ことを約束し、子どもにとって「不適切なコンテンツが簡単に入手できるオンライン上の重大な危害」に対処し、ソーシャルメディア企業が保有する子どもの死亡に関する情報に検視官がアクセスする権限をさらに与えることを約束している。これは、新しい労働党政権の下では、新しいオンライン安全法、または既存のOSAの大幅な修正が間もなく行われることを示唆している。
- 製品の法令遵守及び検証: 2019年に選出された議会はBrexitの困難の真っ只中にあったが、これに続いて、新しい議会が選出されることで、英国とEUの関係を再調整するためのより持続可能なアプローチが可能になる。二大政党はともにEU域外にとどまることを改めて表明しているが、労働党が勝利した場合、EUとの関係を深める可能性が高く、EU製品関連のコンプライアンス要件との整合性が高まることを意味する。一方、保守党が勝利した場合、規制の負担軽減に重点を置き、それに見合ったビジネス義務と業界主導の基準の改革に重点が置かれる可能性が高く、EUの要件からのさらなる乖離が予想される。
- 規制当局の権限と投資: 労働党政権が発足した場合、現在の英国の規制当局は急速に進化する新技術を扱うための「整備が不十分」と考えているため、「ビッグテック(Big Tech)」に対する規制当局の監視が強化される可能性がある。かかる監視のため、「規制当局の規制当局」として機能し、意思決定の目標を設定し、規制当局のパフォーマンスを国際的な同等の組織と比較して評価するレギュラトリー・イノベーション・オフィスの新設を公約している。保守党はそのような新しい規制当局を想定していない。
- 訴訟資金: 労働党のマニフェストはこのテーマを扱っていないが、同党が英国選挙で勝利した場合、訴訟資金提供合意制度の裏付けとなる訴訟資金提供合意法案(強行法規あり)が再導入され、PACCAR 判決が覆される可能性があると見ている。一方、保守党は、仲裁法案や第三者からの資金提供を通じて行うことを含む法律サービス部門への支援を、マニフェストにより明示的に約束している。
すべては「変化」になるのか:重要なポイント
スターマー氏のマニフェストは「変化」と題されている。現在、あらゆる世論調査が労働党の勝利を予測しているにもかかわらず、新政権が発足するまで、政策や具体的な詳細は決まっていない。
2024年7月9日に新議会が召集され、その後、2024年7月17日に国会が開会され、国王の演説の後に全てが明らかになる。この日、新たに任命された議会にて、今後数カ月間の立法上および政策上の優先事項が概説される。
選挙の結果がどちらに転ぶにせよ、英国市場で製品やサービスを提供する企業は、特にデジタル製品やAI製品に関する規制の強化が将来の課題の一部となることが予想される。
ホーガン・ロヴェルズの製品規制に関するグローバルチームは、公法・政策チームとともに、かかる動向を注視している。
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Authored by Valerie Kenyon, Vicki Kooner, Robert Gardener, and Telha Arshad.